病気の話

【第28回】
排尿、蓄尿の異常について(女性編)

 膀胱の働きには、排尿(尿を出す)と蓄尿(尿をためる)の2つがあります。 女性のおしっこトラブルは畜尿に関するものがほとんどで、主に腹圧性尿失禁や過活動膀胱という病気が知られています。

 腹圧性尿失禁はその名の通り、咳やくしゃみなどで腹圧がかかった時に尿漏れを起こす病気です。 ただでさえ膀胱は胴体の一番奥にあるため、いろんな臓器が常にのしかかった状態にあります。 そのストレスを和らげる働きをしているのが、膀胱を真下からハンモックのように支えている骨盤底筋です。 腹圧性尿失禁は、この骨盤底筋のゆるみに関連して起きます。 ゆるみの原因は、出産(骨盤の筋肉が引き伸ばされる)や閉経(女性ホルモンの低下により、筋肉の弾力や張りが失われる)といった女性特有のものに加え、 そもそも他の筋肉と同じように加齢に伴う筋力の低下なども考えられます。 そのゆるみを治す方法に骨盤底筋体操があります。イメージとしては、肛門や膣をギューッと締めて緩めて、を繰り返すものです。 すぐには効果がでません。腕の筋肉を鍛えようと腕立て伏せなどをやり始めても、すぐに筋肉がつかないのと同じです。 2〜3カ月続けて約7割の人に効果が出ると言われています。 こういった体操や薬剤療法で効果がない場合は、尿道スリング手術を検討します。 この手術では骨盤底筋のゆるみをしめなおすことはできませんが、グラグラした尿道をつりあげて膀胱の形を整えることで、 8〜9割の人で効果が得られています。

 水に触れたり水の音を聞く、あるいは外出から帰宅して家のドアノブを触る、すると強い尿意を感じ尿が漏れそうになることはありませんか? これらは過活動膀胱によく見られる症状です。過活動膀胱は膀胱の知覚過敏です。 我慢できないような強い尿意が突然起こり、尿が漏れそうになったり、漏れたりする病気です。 膀胱の活動が過剰・過敏になり起こるのです。 しかし、なぜ膀胱が過敏になるのかはまだわかっていません。ご自分が、これに当てはまるかはOABSSというアンケートがあります。 病院や学会のホームページなどで確認下さい。 膀胱訓練という、短い時間から尿を我慢して、徐々にその時間を延ばしていく方法もありますが、主な治療方法は薬物療法です。 抗コリン剤というグループの中にいくつかの種類があります。 また最近ではβ3刺激剤という新しいグループの薬剤も使われています。 ただこれらは症状がゼロになるまで改善することは極まれです。1回でも2回でも症状が減ってくれれば効果ありと考えてください。 おしっこのトラブルはこわい病気につながることが多くはありませんが、生活の質にかかわってくるものです。 このトラブルがもとで、旅行にも行けない、人と会うのも不安になるなど、人生を楽しめなくなるような状態であるならば、 一度専門医にご相談してみてはいかがでしょうか。


 
平成30年5月
立正佼成会附属佼成病院 泌尿器科部長 富田雅之
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