【第114回】
薬剤関連顎骨壊死
骨粗鬆症治療の普及が進むにつれて顎骨壊死という病名も耳にする機会が増えてきているのではないでしょうか?
骨粗鬆症治療薬である @骨吸収抑制剤のビスホスホネート製剤(経口剤と注射剤があります)とデノスマブ(6ヶ月に1回投与 注射剤) や A骨形成促進作用と骨吸収抑制作用の2つの効果を併せ持つロモソズマブ(1ヶ月に1回 、1年間投与 注射剤)の骨吸収抑制作用による副作用として顎の骨が死滅し、骨が腐った状態になることを薬剤関連顎骨壊死といいます。
壊死と聞くと恐ろしい病気だと思われる方もいらっしゃると思いますが、薬剤関連顎骨壊死の発症率は0.1%, 1000人に1人(呉市データ)と報告されております。
高円寺整形外科院長 大村文敏 先生著『ねこ背が気になったら骨粗鬆症を疑いなさい』に拠りますと
多くの歯科医師は「顎骨壊死が起きる可能性があるので、骨粗鬆症治療を行っている人は診察できない」と拒絶してしまうのです。そして、「抜歯やインプラントの治療を受けたいなら、骨吸収抑制剤を休薬しなさい」と患者に指示してしまいます。しかし、この「骨粗鬆症vs歯科医」の問題に対しては2023年、ひとまず決着がついています。ポジションペーパーが7年ぶりに改定され、原則として抜歯時に骨吸収抑制薬を休薬しないことが提案されたのです。
抜歯前の2〜3カ月間、低用量のビスホスホネート製剤を休薬してもビスホスホネート関連顎骨壊死の発症がそれほど減少しなかったことや、休薬によって骨粗鬆症関連骨折のリスクが上昇することなどを考慮した結果、休薬の有用性が確認されなかったことにより、一部のハイリスク症例を除いて、「原則として抜歯時に休薬は不用」という新たな認識として確立されました。
(中略)多くの整形外科医と歯科医は協調して骨粗鬆症治療と歯科治療を同時に行う流れになりつつあります。
顎骨壊死という病名が一人歩きをしてしまい いたずらに不安を抱かれている方が大勢いらっしゃると思いますが、骨粗鬆症の治療を受けていても、ハイリスクの方を除いては、むやみに休薬しなくても歯の治療も受けられるのです。
骨と歯の健康を維持することは健康寿命の延伸に大変重要です。これを機会に正しい理解を深めていただき皆様の健康促進の一助になれば幸いに存じます。
[枠内部分は下記出典p123〜p125から引用]
出典
著者 大村 文敏
『ねこ背が気になったら骨粗鬆症を疑いなさい』 幻冬舎
令和7年7月
高円寺整形外科(http://www.sanyuukai.com/)
福田 憲昭



















