【第120回】
皮膚及び粘膜の単純ヘルペスウイルス感染症
『病因・発症機序・症状』
単純ヘルペスウイルス(herpes simplex virus : 以下HSV)の1型、2型の感染により皮膚や粘膜に水疱やびらんを形成する疾患です。虫刺され・接触皮膚炎・伝染性膿痂疹(とびひ)・固定薬疹・水痘・帯状疱疹・梅毒等との鑑別が必要になる場合があります。
初感染の時、HSVは皮膚の微小な傷部ないし口腔、眼、生殖器粘膜から侵入し、知覚神経を伝って神経節に到達して潜伏感染します。初感染で発症する場合と潜伏感染しているHSVが再活性化して発症する場合があります。初感染の場合は発症しない方が多いといわれておりますが、発症した場合は再活性化と比較して強い症状になります。
○初感染での発症:びらん・水疱多発、強い痛み、発熱やリンパ節腫脹を伴う等、症状が強い傾向にあります。治癒に約2〜4週間を要します。
○再活性化での発症:免疫力低下(発熱、ストレス、過労、排卵後等)、皮膚・粘膜の炎症(日焼け、外傷等)が誘因となりHSVが再活性化し、潜伏感染している知覚神経の支配領域の皮膚や粘膜の一部に病巣を形成します。初感染発症より症状が軽微であることが多いです。
『病型』
全身のどこでも発症し得るのですが、口唇や陰部、手指に好発します。
部位別に呼称されている代表的病型と知覚神経の走行とは無関係に広がる病型(カポジ水痘様発疹症)について記載します。
○口唇ヘルペス:最も頻度の多い病型。口唇やその周辺に症状出現。大部分がHSV-1の再活性化によるものですが、初感染発症の場合は症状が強くなります。
○ヘルペス性歯肉口内炎:乳児・小児のHSV-1初感染発症で多く、発熱・食欲不振・咽頭痛・所属リンパ節腫脹等と共に口腔粘膜・舌・口唇に有痛性の水疱、びらんが多発します。
○性器ヘルペス:成人のHSV-2感染による場合が多いのですが、近年は HSV-1による場合もあります。外陰部に発症。初感染発症の場合は、発熱・所属リンパ節腫脹等伴い、多数の水疱が出現します。排尿痛・痛みによる歩行障害、稀に排尿障害を認めることもあります。
○ヘルペス性ひょう疽:指先の微小な傷からHSVが侵入して、指に有痛性の水疱や膿疱が出現します。
○カポジ水痘様発疹症:アトピー性皮膚炎等の皮膚病変にHSVが感染して知覚神経の走行とは無関係に経皮感染して拡大する病型。高熱、リンパ節腫脹、細菌感染を伴うことも少なくありません。
『治療』
抗ヘルペス薬投与(重症度に応じて内服、点滴、外用を行います)。
抗ヘルペス薬で症状治癒しても体内からHSVを排除はできないため、再発してしまうことはあります。再発頻度が多く一定の基準を満たす方は、前駆症状(皮疹出る前の痛み・痒み)の時点での内服開始や再発抑制のための内服治療が適応になる場合があります。
他の人への伝搬は接触感染であるため、発症時はタオルを共有しない、患部をなるべく触らないようにする等の注意をしましょう。再発頻度の多い方は発症予防のために疲労や日光暴露をなるべく避けて、発症の際は早めに治療を開始しましょう。
令和8年4月
ひるた皮フ科クリニック(https://hiruta-hifukaclinic.com)
蛭田 志真子



















