【第121回】
何歳まで妊娠できるか
外来診療において「何歳まで妊娠できるでしょうか?」という質問をしばしば頂きます。排卵のある限り可能性ゼロではない、閉経したら可能性はない、とお答えしております。
表は年次・年齢別の死産・人工中絶・出生数と女子人口(国立社会保障人口問題研究所と厚生労働省のデータから作成)です。これを見ると次のようなことがわかります。なお、自然死産や配偶子提供の数は考慮していません。
表1 年次・母体年齢階級別 死産・人工妊娠中絶・出生数 と 女子人口
・避妊・中絶普及前の45-49歳女子の妊娠率は現在の約20倍だった
1925年以前の日本では避妊・中絶がほぼ存在せず、妊娠したら流死産しない限り出産あるのみでした。つまり、妊娠数は出生数とほぼ同じと考えられます。1925年の45-49歳女子人口1,515,661人は2024年4,199,986人の約36%ですが、妊娠(出生)数19,338は2024年の妊娠数2688(出生1609+中絶1079)の約7.2倍です。また、人口1000人当たり妊娠率は12.8で2024年0.64の約20倍です。終戦直後1947年の妊娠(出生)数11,899は2024年の約4.4倍で、人口当たり妊娠率は9.8倍でした。
・総出生数は低下傾向だが、高齢になるほど低下の度合が緩徐である
45歳以上の出生数は1980年頃以降、減少から増加傾向に転じました。また、2010年頃までは中絶数が出生数を上回っていましたが、以降は逆転しています 。
ちなみに不妊治療が普及した現在の高齢階層においても体外受精によらない妊娠が9割弱です。2023年の45ー49歳の 妊娠数 2718(出生1645+中絶1073) に対して体外受精の生産周期数は351(日本産科婦人科学会)で、体外受精でない妊娠は2367件、87%と推計されます。なお、国内の配偶子提供は10-24件/年で推移しているようです(JISART調べ)。
もちろん加齢が進むほど妊娠の可能性は低下しますし、妊娠高血圧症候群の発症率や妊産婦死亡率は上昇します。高年齢での妊娠については様々な意見があると思います。しかし、誰しも自分の子や孫が晩婚や晩産にならないとは言い切れないのではないでしょうか。

図1 体外受精における年齢と生産分娩率
表2 母の年齢(5歳階級)・出生順位別にみた出生数の年次推移
さて、冒頭の質問への回答には続きがあります。加齢が進むほど発生能の高い(赤ちゃんまで育つ)卵子を排卵する率は低下していきます。年に12回排卵するとして、25歳では〜12回、45歳で0?数回、といった印象です。妊孕性(妊娠する能力)の個人差は大きくなります。また、卵巣のコンディションには波があり、変動しながら閉経に向かいます。今月の卵子がいまひとつでも来月もダメとは限らないし、その逆もあり得るのです。
産婦人科クリニックでは、卵巣の大きさや卵胞数の評価、タイミングのとり方や排卵検査薬の使い方のアドバイス等を行っています。遅い妊活相談も珍しくありません。お役に立てれば幸いです。
令和8年5月
みどりクリニック(https://www.clinic-midori.com/)
小林 百合恵



















