病気の話

【第123回】 「杉並区がん検診」で対象の“各種のがん”について
---杉並区がん検診を受診する際に知っておいて欲しいこと

 現在までに、発がんのメカニズムが完全には解明されていないため、“発がん原因を有する人のみを対象に検査する”ということが出来ません。「“がん遺伝子”や“がん抑制遺伝子”、“その他の遺伝子レベルの研究”」によって、「がんが遺伝子レベルの疾患であること」は判明しつつありますが、それも道半ばの感があります。
 ただ、近年では遺伝子レベルの免疫の研究により多くの効果的な治療薬が登場しており、かつてのようにただ恐れるだけの病気ではなくなりつつあります。
 このような治療環境の進歩に伴い、治療の最適化、治療効果を高めるためにも、一層早期発見、早期治療の重要性は高まっています。

 杉並区では、各種のがん検診を行っています。がん検診は早期発見、早期治療に非常に有用ですので、是非受診していただきたいと思います。

対象者

杉並区区民であり
子宮頚がん(女性のみ):20歳〜、
肺・大腸・乳がん(女性のみ):40歳〜、
胃がん:50歳〜
など、対象年齢に違いがあります。
(対象者については杉並区のホームページをご参照ください)

肺がん検診について

 肺がんはがん死亡数No1ですから、是非受診していただきたい検診です。
 ただ、中には非喫煙者であることを理由にされて受診されない方がいらっしゃいますが、これは大きな間違いです。
 肺がんには扁平上皮がん、腺がん、大細胞がん、小細胞がんがあります。

 日本を含めたアジアの国々の統計では喫煙との関連性の低いとされる肺腺がんにおいて“患者の約40〜50%が非喫煙者”とのデータもあるのです。喫煙との関連性が高い扁平上皮がんは喫煙率の低下に伴い減少傾向にあるのと対照的に腺がんは増加傾向にあります。腺がんの原因は未だ不明で、PM2.5を始めとした大気汚染などや他の要因も示唆されるに留まっています。しかし、肺がんは最も遺伝子分析による治療が進んでおり、「分子標的薬」「チェックポイント阻害薬」などの治療が盛んですが、その中で、肺腺がんはその治療効果が良いため、早期発見の恩恵は大きいと考えられます。

 検診は胸部レントゲン撮影にて施行され、撮影医療機関による読影と他の呼吸器専門医療機関による読影がされ、精度向上に努めています。最終の検診結果がE判定(肺がんの疑い)の場合は専門病院への受診が受診者に義務づけられていることが注意する点です。
 現在、杉並区の肺がん検診の精度は全国レベルでもトップクラスです。是非、受診して頂きたいと思います。

乳がん検診について

 乳がんは女性では罹患率(がんになる確率)一位で約9人にひとりが発症し、がんによる死亡数は第5位のがんです。すなわち、乳がんに罹りやすいが、罹っても治癒する可能性が高いがんと言えます。早期発見により手術による乳房の切除範囲も小さく出来るメリットも大きく、その他の補助治療として、従来の放射線治療、抗がん剤治療、ホルモン療法に加え、分子レベルの研究が進んだ結果「分子標的治療薬」も治療の選択肢に加わっています。

 検診には、かつては触診、超音波検査が施行されていましたが、現在ではマンモグラフィー検査で統一されています。マンモグラフィーの利点には多数の医師の診断による診断精度の向上、結果の保存性の良さがあります。難点としては検査時の疼痛があり、受診を控える方がいらっしゃいますが、検査のメリットを考えて、是非受診して頂ければと思います。残念ながら区の検診は2年に一度ですが、検査医療機関に相談して、出来れば年に一度の受診をお勧めいたします。

胃がん検診について

 胃がんの発症は、現在のところヘリコバクターピロリ菌(以下HP菌)の胃内感染が主な原因であると考えられています。したがって、一度は医療機関にてHP菌感染の有無を調べることをお勧めします(自費診療の場合が多いですが)。HP菌感染陰性の場合、検査の種類(数種類の検査があります)、数値までの詳細な検査結果を記録しておいてください。今後の胃部不快などで医療機関受診時に大変有用な情報となります。一方、HP菌感染陽性の患者さんには薬によるHP菌の除菌が施行されています(保険適応です)。除菌により胃がん発症率を半減することが出来ます。

 HP菌は5歳までの幼児期に感染し、長い年月をかけて胃がんを発症することが判明しているため、自治体によっては(杉並区では実施しておりません)、中学生を対象に尿検査でHP菌の感染をスクリーニングしており、陽性者には除菌が可能となっています。

 幸いなことに近年HP菌の感染率は劇的に減少しており、胃がんの発症数も減少傾向にあります。

 胃がん検診は主に胃内視鏡検査によって施行されており、精密検査の域に達している優れた検診です。2年に一度の施行頻度ですので是非受診してください。検査時に咽頭、喉頭、食道、十二指腸の検査もしていますので、飲酒・喫煙が関与していることが強く示唆されている喉頭・咽頭・食道がん発見に対しても非常に有効です。HP陰性の方でも、多飲酒、喫煙の方は胃がん検診を不要と考えずに受診されることをお勧めします。

大腸がん検診について

 大腸がんは近年食事の欧米化に伴い増加傾向にあり、その発がんのメカニズムも他のがんに比べて良く解明されています。ここでは遺伝子レベルでの異常・変化には言及しませんが、病理組織学的変化としては、「正常粘膜→良性の線腫→がん」という変遷が大部分の大腸がんの経過で認められています。したがって線腫の段階で、大腸内視鏡による切除をして大腸がんを排除することが可能です。

 本来なら“胃がん検診”においての“胃内視鏡検査”と同様に“大腸がん検診”にも“大腸内視鏡検査”をしたいところですが、検査の前処置の問題、前投薬の問題、検査時間、コスト等の問題などでスクリーニング検査としては難しいのが現状です。

 そのため内視鏡検査を減らす目的で便に血液が混ざっているかどうかの検査〈便ヘモグロビン検査〉をすることが、大腸がん検診に採用されています。「二日間」便を検査するのは、一日だけの検査では見落とす可能性が高いことと、三日間検査したとしてもあまり精度が変わらないからです。

 注意すべきは二日間の検査をして一日でも陽性反応が出れば大腸内視鏡検査を受けることが義務付けられていることです。もし、大腸がんの可能性は知りたいが、超高齢であるなどのため、大腸内視鏡検査を受けることを決めかねている場合などでは、検査前に検診医療機関に相談することをお勧めいたします。

子宮頸がん検診について

 子宮頸がんの原因はヒトパピローマウイルスの性感染であることが判明しています。予防するためのワクチンも既に開発され、ワクチン接種が世界で広く普及しています。日本でも小学校6年生〜高校1年生相当の女性に対して公費での接種が可能です。性感染であるため初めての性交渉前に接種することが効果的とされています。また最近杉並区では、子宮頸がんにはならない男性でも、女性に感染させないようにするために、公費での接種が可能となっています。これからの時代背景を考えると、性差に関係なくワクチン接種をするようになっていく可能性があります。

 検診は、問診、視診、内診、子宮頚部細胞診でなされ、細胞診でNILMの診断結果以外では、経過観察、精密検査などの対象となります。精密検査の対象となっても、即、がんを心配しなくても良く、経過が良い方向へと進む場合も多いので、専門医の診察をしっかり受けて頂きたいと思います。早期発見であれば、治療はレーザー治療、円錐切除術など侵襲の小さな治療も施行されますので、安心して検診を受けていただければと思います。


追記:前立腺がん検診について(現在は杉並区では施行されておりません)
 前立腺がんは男性のがん罹患率No1のがんであり、約10人にひとりが罹患するといわれています。この罹患率の高さは血液検査でPSA値を測定することで非常に早期にがんを発見できることも一因と考えられています。以前は杉並区でも施行していましたが、種々の理由で現在は施行していません。しかしPSA検査は非常に有用であることは確かなので、検診医療機関でご相談されると良いでしょう。

 以上、杉並区がん検診を受診される時の参考として頂ければ幸いです。




令和8年7月
今関医院(https://www.imaseki-iin.com/
白今 関英男

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