【第124回】
良性発作性頭位めまい症
寝返りをうった時、昼寝から起きた時、美容院や歯医者で横になったり起き上がった時。あるいは、上にあるものを取ろうとしたり、洗濯物を干そうと見上げたり、下を向いて靴を履こうとした時ーー。このように頭の位置を変えた際、ぐるぐると目が回るような激しいめまいを感じたことはありませんか。
周囲が激しく回転するめまいは強い恐怖を伴いますが、「良性発作性頭位めまい症」はその名前の通り、きちんと診断を受けて適切な治療を行えば改善しやすい、比較的よくある病気です。
私たちの耳の奥(内耳)には、体のバランスを保つための2種類のセンサーがあります。 1つ目の「耳石器(じせきき)」は、主に体の傾きを感じるための器官です。ここには「耳石」という小さな砂のような組織が乗っていますが、加齢や頭をぶつけるなどが原因で、この耳石が剥がれ落ちてしまうことがあります。この剥がれた耳石が、隣にある2つ目のセンサー「三半規管(さんはんきかん)」の中に入り込んでしまうことがめまいの引き金です。三半規管は3つの輪っかのような形で出来ており、普段は頭が動くことで中のリンパ液が動き、私たちは頭の回転運動を感知しています。しかし、三半規管に耳石が入り込むと、頭を動かした時に耳石が中をコロコロと転がります。すると、中のリンパ液が激しく揺れ動いてバランスのセンサーが過剰に刺激され、結果として「ぐるぐると回っている」と感じてしまうのです。
したがってこの三半規管に入り込んでしまった小さな耳石を元の場所に戻してあげれば、激しいめまいは改善します。
耳鼻科でめまいの診察を受けたことがある方はご存知かもしれませんが、めまいの検査では大きなメガネのような特殊な器具を装着します。耳鼻科医は患者さんの目の動き(眼振)を拡大して観察することで、剥がれ落ちた耳石が三半規管のどの輪っかに入り込んでしまったのかを突き止めます。そして、耳石位置に合わせて、それを元の場所へと誘導する「耳石置換法(じせきちかんほう)」という体操(理学療法)を指導します。
耳石のズレは自然に治ることも多く、数週間から1ヶ月程度で改善していくと言われています。しかし、こうした回転性のめまいは急に起こり、数秒から数分で治るとはいえ、強い吐き気や嘔吐を伴うこともあるため非常に不快なものですのです。きちんと診断と治療を受けるためにも、ぜひ専門医にご相談ください。
また、めまいの原因には他にもさまざまなものがあり、中には脳血管障害など「中枢性(脳が原因)」のケースもあるため、頭の検査などを並行して行う場合もあります。
めまい発作が起こると強い不安に襲われ、救急車を呼びたくなるかもしれません。しかし、意識がはっきりしている、激しい頭痛がない、ものが二重に見えない(複視)など、他に危険な神経症状がなければ、まずは落ち着いてめまいが治るのを待ち、それからの受診でも大丈夫です。 激しいめまいは恐ろしいものですが、正しく対処すれば決して怖い病気ではありません。一人で抱え込まず、まずは一度耳鼻咽喉科の専門医にご相談ください。
令和8年8月
下高井戸駅前クリニックみみはなのどプラス(https://www.shimotaka-clinic.com/)
渡邉 麗子



















